

- ■概要
- 男性の2人に1人、女性の3人に1人ががんにかかる時代です。平成18年に策定された「がん基本対策法」では [1]がんの予防・早期発見の推進 [2]がん医療の均てん化の促進 [3]研究の推進、の三本柱を掲げています。このうち「研究の推進」とは治験、臨床研究の推進、がん登録事業だけではなく、「基礎研究と臨床の橋渡し=トランスレーショナルリサーチ」の推進も含まれています。兵庫県立がんセンター研究部は、開設されて以来一貫してがん臨床に還元できる研究を行ってきました。腫瘍マーカーHCGβcore fragmentの臨床応用、光線力学的治療PDTの殺細胞効果、移植におけるGVHD早期予測法、抗がん剤感受性予測法の開発、血液がん細胞株の樹立など研究施設としては小規模ながら数々の業績を挙げてきました。
- ■研究部の業務内容
- 現在当研究部が取り組んでおりますテーマは下記の通りです。
- (1)がん臨床研究(研究参加者)
- A)卵巣がん発生メカニズムと新規治療法の開発(婦人科、奈良県立医大産婦人科、シスメックス(株))
卵巣がんは半数以上の方が進行がんとして発見され、手術と化学療法を組み合わせた治療が行われます。その後いかに再発を抑えるかが治療のポイントとなります。私たちは卵巣がんに特異的に発現が高まっている分子の同定に成功しており、その発現を抑制する新たな治療方法の開発に取り組んでいます。
- B)HPVウイルスによる発がんとバイオマーカーとしての役割(放射線治療科、シスメックス(株))
HPV(ヒトパピローマウイルス)はほぼ全ての子宮頸がんや一部の頭頚部がんの原因となっています。子宮頸部ではまず前がん病変が生じますが、がんに移行するかどうかを予測することは困難です。しかし「経過観察でよい」のか「積極的な治療を要する」のかを見極めるのは、患者さんにとっても非常に大きな問題です。私たちはHPVのDNAの変化をヒントに「見極め」を研究しております。また頭頚部がんではHPV感染のあるなしで治療方法を選択することも提唱されており、そのバイオマーカーとしての役割も検討しています。
- C)腫瘍細胞株の樹立(血液内科)
当センターオリジナルの腫瘍細胞株を数多く樹立されていますが(Hashimoto H and Kojima A et al Human Cell 2008)、特に血液内科によって樹立された様々な造血器腫瘍細胞株は興味深い染色体異常や遺伝子異常を有しており、新たな遺伝子診断法や治療薬剤の開発に貴重な研究材料となっています。
- D)軟部悪性腫瘍の中性子捕捉療法(整形外科、神戸大学整形外科、神戸学院大学薬学部)
明細胞肉腫は稀な腫瘍ですが、治療方法が確立されていない難治性の軟部悪性腫瘍です。他大学と共同で中性子捕捉療法の可能性について研究しています。
- (2)臨床検体の保存(腫瘍バンク)
- 現在、婦人科、乳腺科、血液内科、脳神経外科の手術標本の新鮮凍結検体の収集ならびに腫瘍組織から抽出したDNA、RNAを超低温冷凍庫にて保存しており、貴重なコレクションとなっています。
- (3)前臨床試験受託研究の窓口
- 臨床検体を使用した研究を「前臨床試験」と呼びますが、臨床試験にステップアップするために不可欠な過程です。研究部では積極的に民間企業からの受託研究を展開し、現在4つの受託研究が進行しています。
- ■院外共同研究員の募集
- 兵庫県立がんセンターは各種のがんにおいて国内有数の症例数を取り扱っており、手術件数は2000件を越え、放射線治療、化学療法も活発に行われています。しかし、研究を進めていくためには,診療が主な仕事である院内職員だけではマンパワー不足なため、当センターの豊富な検体を生かしたがん研究に携わってくださる方を求めています。
当センターでは、「院外共同研究員」という制度を設けており、国内外の大学、民間企業、公的機関を問わず研究員として受け入れています。当研究部独自の研究テーマもありますが、皆様が今まで見出したことを実際の臨床検体で有効性を確認したいなど研究テーマの持ち込みも大歓迎です。研究機関と違ってここ兵庫県立がんセンターはがん治療の最前線です。病に悩み苦しむ患者さんを身近に感じながら一緒にやりませんか? 当研究部のもう一つの売りは様々な分野の研究者が参集していることです。皆でディスカッションしながら研究を続けています。ご興味がある方は、お気軽に研究部須藤までご連絡ください。
- 企業(製薬、診断開発)の方へ
- 当センターの豊富な臨床検体を用いて、非臨床研究(貴社の研究で見出されたことを、実際の臨床検体で確認する)を行ってみませんか?従来の病理検体に加え、最近は研究部が中心となって新鮮凍結検体の収集も行っております。また組織、血液などからRNA、DNAを既に精製し、凍結保存している検体も数多くあります。ご希望のがん腫、収集方法などは研究部が各臨床科、病理科、検査部とコーディネートいたします。
- 学部生、大学院生の方へ
- がんに関する研究を行っている(あるいはこれから始めたい)学部生、大学院生を歓迎いたします(学部は問いません)。細胞株やin vitroで見出したことを臨床検体で確認してみませんか?基礎研究を臨床に還元するためには、このプロセスは大変重要です。研究部には専任研究員が在籍しており、懇切丁寧に研究指導をいたします。過去に当研究部での研究をもって学位取得された方が数多くいます。
- 当研究部の主な設備
- 細胞培養室、動物飼育施設(ヌードマウス飼育可)、リアルタイムPCR(Agilent Mx3005P)、蛍光顕微鏡(KEYENCE)、フローサイトメトリー(BD FACSCalibur)、PCRサーマルサイクラー2台、化学発光検出装置(ケミルミTAITEC)、マイクロプレートリーダー
- 西村 隆一郎
- 院長
研究部長
婦人科部長
1973年卒
研究領域:婦人科がん、腫瘍マーカー
- 須藤 保
- 研究員(婦人科医長、検査部生化学検査室長兼任)
1994年卒
研究領域:がん細胞生物学、がんバイオマーカー
